新潟県上越市の農事組合法人

農業おじさんの自由研究

節水型乾田直播とは?水稲(移植栽培)との違いやメリットをわかりやすく解説

節水型乾田直播とは?

節水型乾田直播で栽培している米

節水型乾田直播(せっすいがた・かんでんちょくは)とは、水を張らない田んぼに、直接種もみをまいて稲を育てる栽培方法です。

一般的な稲作では、苗を育ててから田植えを行い、田んぼには水を張ったり落としたりして管理します。
一方、節水型乾田直播では「育苗」や「田植え」を行わず、乾いた状態の田んぼに直接種をまき、必要最小限の水で管理します。

つまり一言で言うと、「水と人手をできるだけ使わずに稲を育てるための、合理化された稲作」と言える農法です。

従来の水稲栽培(移植栽培)と何が違うのか

水稲と節水型乾田直播を比較すると、以下のような違いがあります。

水稲栽培(移植栽培)

  • 種もみから苗を育てる(育苗)
  • 耕耘・代掻きをし、整えた田んぼに水を張ってから、田植え機で苗を植える

節水型乾田直播

節水型乾田播種による播種の様子

  • 育苗と田植え作業が不要、直接圃場に播種する
  • 水を張る場合もあるが、水稲のように常時湛水しない

※圃場:ほじょう、農地のこと 
播種:はしゅ、種もみをまくと言う意味 
湛水:たんすい、湛水しない=水を貯めた状態にしないという意味

工程表

項目 水稲 節水型乾田直播
育苗 必要 不要
田植え 必要 不要
作業集中 春に集中 分散しやすい

工程を表で見るとわかる通り、水稲は作業が春に集中しやすいのに対し、
節水型乾田直播は作業そのものが減るため、作業の「山」が平らになる イメージです。
※業務負荷やスケジュールが特定の日時や作業者に集中(山積み)している状態を解消し、均等に分散させて平準化すること

なぜ今、節水型乾田直播が注目されているのか

人不足等の問題

節水型乾田直播が注目されている理由は、技術的な流行ではありません。
農業の現場の課題に合致しているからです。

  • 農業従事者の高齢化・人手不足
  • 水利施設の老朽化や水不足リスク
  • 大規模化による作業負担の増大
  • 気候変動による栽培環境の変化

これらの問題に対して、「水を減らす」「作業を減らす」「機械に頼る」という方向性は、もはや避けられない流れです。
節水型乾田直播は、その現実解のひとつとして注目されています。

節水型乾田直播のメリット・デメリット

メリット

  1. 作業時間・労力を大きく削減できる
    育苗と田植えが不要になることで、春先の作業負担が激減します。
    特に大規模経営では、この差がそのまま経営余力になります。
  2. 水使用量を抑えられる
    常時水を張らないため、水使用量は移植栽培より大幅に少なくなります。
    水利条件が厳しい地域では大きな強みです。
  3. 作業の平準化ができる
    「田植え適期」に縛られにくく、作業を分散できます。
    これは高齢者や少人数経営にとって非常に重要です。

デメリット

  1. 雑草対策が難しい
    水を張らない期間があるため、雑草が生えやすいのが最大の課題です。
    除草剤の使い方やタイミングが非常に重要になります。
  2. 初期生育が不安定になりやすい
    播種後の降雨や気温条件によって、苗立ちに差が出やすい傾向があります。
    安定させるには経験と管理技術が必要です。
  3. 「楽な農法」ではない
    省力化はできますが、管理が行き届かない場合は成立しない農法です。
    水・雑草・施肥の判断力がより求められます。
    スマート農業の導入(GPSで圃場の状況を把握し、ドローンで農薬や肥料を的確・適量に散布)すれば少ない人数でも管理は効率化できますが、莫大な費用が発生します。

どんな地域・圃場条件に向いている農法か

節水型乾田直播に向いている圃場

  • 排水性が良い圃場
  • 均平が取れている田んぼ
  • 大区画・団地化された圃場
  • 水利条件が不安定、または節水が求められる地域

導入難易度が高い圃場

  • 排水不良
  • 小区画・不整形
  • 雑草が多発しやすい圃場
  • 人不足で管理が行き届かない現場

我々ファーマーズ稲は雪国である新潟県上越市に位置しており、
排水性の課題は抱えていますが概ね節水型乾田直播の条件を満たしています。

スマート農業の導入

市内では80ha(東京ドーム20個分の広さ)の圃場を運営しており、ドローンやザルビオといった先端機器を導入し、農薬・肥料の散布を効率化できているため、節水型乾田直播に向いていると判断し、令和7年より導入を開始しました。
前述のデメリット部分でもお伝えしましたが、スマート農業を実施しないとなかなか実現は難しいのが現状です。

節水型乾田直播の基本的な栽培スケジュール

大まかな流れは以下の通りです。

3〜4月:種もみの準備、田起こし、播種(乾いた田んぼに直接種もみをまく)
6〜8月:初期水管理(必要に応じて浅水)、施肥、雑草対策
7〜9月:最終除草剤散布終了後、出穂前水やり後に出穂
9月〜10月:収穫

ポイントは、3〜4月の工程の初期管理が成否を分けるという点です。

節水型乾田直播は本当に省力・省コストになるのか

結論から言うと、既に大規模圃場の管理でスマート農業を実践している農家・農業法人であれば、
そのノウハウをそのまま活かせるので省力・省コストになると思います。
短期的に見ると差が出にくくても、中長期で見ると作業時間と人件費の削減効果が如実に現れるのが特徴です。

まだスマート農業を導入していない場合、最初にぶつかる壁は間違いなく以下だと思います。
とてもお金がかかります。

  • 専用機械の導入
  • 初期管理の手間
  • 除草剤・肥料コスト

節水型乾田直播はこれからの稲作の主流になるのか

すべての稲作が節水型乾田直播に置き換わることはありません。
しかし、以下のような条件が一致する場合は確実に重要な選択肢の一つになっていくでしょう。

  • 大規模経営
  • 労働力不足地域
  • 水資源に制約のある地域

「万能な農法」ではなく、条件に合えば強力な武器になる農法です。

まとめ

節水型乾田直播は「楽をするための農法」ではなく、技術的な流行でもありません。

  • 水をどう使うか
  • 人手をどう減らすか
  • 経営をどう続けるか

という問いに対する、現場発の現実的な答えがこの農法に行き着いた形となっています。

農業を知らない人にとっては、「稲作もここまで変わってきている」という発見を。
農業に携わる人にとっては、「自分の圃場・経営に合うかどうかを考える材料」を。
そんな視点で読んでいただければと思います。

ファーマーズ稲の節水型乾田直播の手順は以下のページでも説明させていただいております。
令和7年は試験的に10haの農地で実施させていただきましたが、無事、上越の美味しいお米を収穫することができました。

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